(初出『カクナリ!5』2019年12月 なお、一部に修正をしました)
将棋考古学沼への誘いで「将棋考古学沼」にお誘いしましたが、普段どのように資料を掘っているのか、今回は紹介したいと思います。
新聞資料の閲覧ができる施設は多くありますが、国立国会図書館東京本館(以下国会図書館)が所蔵資料数において優っており、銀杏記者が中継ブログで「
将棋の調べものにおすすめ」と触れたこともありましたので、国会図書館を例に挙げます。
なお、国会図書館は18歳以上の人であれば誰でも利用できます。
犬などの動物は無理なようですが、人間に擬態したタルトは潜り込んでいるようです。
入口は本館と新館の2ヶ所あります。お薦めは新館です。
通常のロッカーは少し小さいので大型ロッカーを使いたいのですが、本館から入場する人が多く、新館に空きがあることが多いためです。
本館の大型ロッカーはコイン式のため、係員に声をかける必要もあります。
国会図書館は基本的にタイムアタックなので、声掛けをする一分一秒でも時間を浪費するのが惜しいです。
新聞資料室が新館にあるということもありますし、新館側から入りましょう。
国会図書館で新聞資料を閲覧するには、3つの方法があります。
① 利用者用端末でデータベースを開き、デジタル資料を見る
② 新聞資料室の開架資料を閲覧する
③ 新聞資料室で書庫内資料を請求して閲覧する
将棋考古学の分野では主に③でマイクロフィルムを閲覧することになるのですが、①や②も重要なことです。
「
将棋棋士成績DB」の観戦記検索機能で調べると、2019年10月現在、『朝日新聞』『読売新聞』『毎日新聞』の三大紙であってもデータが揃っていません。
DB上で戦型欄が空白なものは、採譜もされていないものです。
手をつけて下さる方がいれば、とてもありがたいです。
最初から先史を調べるのは大変なので、こうした有史を①や②で閲覧することから始めて、慣れた頃に③に移るのがよいでしょう。
問題は③です。
国会図書館では大部分の資料が書庫にあり、端末で資料を請求した後、届くまで15分弱待たなくてはいけません。
このロスをどれだけ減らせるかが勝負の分れ目です。
ここで大事なのは、国会図書館に着いてから閲覧資料を探しているようでは話にならない、ということです。
着いてから徐に検索を始めている人が多く見られますが、閉館時間は待ってくれません。
「国立国会図書館オンライン」は館外でも使え、閲覧申込カートに入れる所までは自宅でもできます。
閲覧したいものを事前にまとめてカートに入れることで、検索する時間を省略しましょう。
国会図書館での戦いは、自宅にいる時から既に始まっているのです。
新聞資料室は4階ですが、入場してすぐスマートフォン等で資料の閲覧申込を行えば、端末にログインする時間と4階に上がる時間を短縮できます。
こうした細かい工夫が大切になります。
理論上は、荷物を外に置いて入場し、申込をしてから一旦退場してロッカーに荷物を預けるのが最善です。
ただし、警備員に不審者を見るような怪訝な顔をされるので、お薦めはしません。
資料が到着した時の案内はありませんが、端末にログインしていると、到着した際に通知が入ります。
新聞資料室に入ってから端末にログインし、将棋関連のデジタル資料を読みながら到着を待つのが味の良い手です。
到着した資料を受け取れば、いよいよ閲覧です。
原紙や縮刷版などの資料はそのまま読めばいいのですが、マイクロフィルムの場合は専用のリーダーを使わなくてはいけません。
リーダーにはアナログとデジタルの二種類あります。
国会図書館の職員に聞くと複写が楽なデジタルでの閲覧を薦められますが、私のお薦めはアナログです。
デジタルはピント合わせで時間を取られるため、アナログの方が早いためです。
一面につき数秒の違いですが、一年分で考えると数十分のロスになります。
ただし、アナログのリーダーにはピント調節機能が壊れているものがままあります。
つまみを少し動かしてみて、勝手に戻ってしまうものは壊れています。
別のリーダーを利用しましょう。
新聞を閲覧しながら、観戦記を読んで掲載状況のメモや採譜をひたすらしていきます。
とにかく時間がかかる作業です。
一年分読むのに2時間強、採譜もすると一局につき5分以上更にかかります。
資料請求は閉館の1時間前に終わるので、一分一秒が大切になってきます。
国会図書館は、リアルタイムアタックなのです。
読んでいると、何処かでグルグルとハンドルを回す音が聞こえてくるでしょう。
それは、同志がリールと格闘している音です。
一度に3点しか借りられないため、読んで返して読んで返して……という作業を閉館まで繰り返すのですが、資料請求後の15分をどうするか、再度考える必要があります。
待ち時間に食事や資料の複写をするのがよくある手ですが、もう少し効率良く行動したいです。
読んだ資料を返却し、空いた点数分を請求して待つ間に残りを読み進める方法が最善手でしょうか。
これを繰り返せば、閉館まで待ち時間なしで資料を読み続ける永久機関が誕生します。
ただし、新聞資料とは別に図書を3点、雑誌を10点借りられるため、それらを複合して活用することでそれぞれの待ち時間をなくす手もあります。
私の最近のトレンドは漫画です。例えば図書で『将棋めし』を借り、雑誌で『コミックフラッパー』を借ります。
新聞資料の到着が一番早いのでまず新聞を閲覧し、一度新聞資料の返却と申込をした後、それぞれのカウンターで『将棋めし』と『コミックフラッパー』を受取ります。
そして待ち時間に『将棋めし』を広げ
「なゆた可愛い!」
「このコマの杜谷の眉毛関数は高い!」
などと読んでいれば、資料はいつの間にか到着しているはずです。
雑誌も請求するのがポイントで、読み比べることで加筆や修正された所が分かり、
「この古丹波はなぜ可愛くなったのか」
「お馬ちゃんの毛色が修正された意味は?」
といったことを色々考えることができます。
同様のことは、『盤上の詰みと罰』と『コミックハイ!』の他、あらゆる将棋漫画で行えます。
漫画を楽しく読みすぎてしまい気づいたら閉館時間になる、という頓死筋が常にありますので、それには十分注意しましょう。
自分なりの攻略法を見つけ、充実した国会図書館ライフを送りましょう。
国会図書館及び「将棋考古学沼」は、いつでもあなたをお待ちしています。