昨年に引き続き順位戦食事別勝敗統計を行う予定であるが、6月末まで忙しいため、昨年と同じく7月頃に公開する予定である。
しかしながら、3月31日をもってみろく庵が閉店するという将棋界にとっての重大ニュースがあったので、惜別の思いを込めてみろく庵に関する項目だけ先行して書く事にした。
過去記事に関しては、アイディア元の将棋ペンクラブログを含め、下記記事を参照されたい。
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2009年度順位戦食事別勝敗統計(概要)
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2009年度順位戦食事別勝敗統計(食事分類編)
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2009年度順位戦食事別勝敗統計(個別メニュー編)
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2017年度順位戦食事別勝敗統計(出前店編)
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2017年度順位戦食事別勝敗統計(食事分類編)
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2017年度順位戦食事別勝敗統計(追加注文編)
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2017年度順位戦食事別勝敗統計(個別メニュー編)
なお、集計にあたっては以下のルールを設けている
1・順位戦は全678局。そのうち、休憩前終局・静岡対局を除いた2556食分を集計した。
2・休憩前に終局した対局で終局前に出前注文がされた場合、対局中に食事を取っていない分についてはカウントしなかった。
3・今回は出前注文を対象にしたので、各種の買い出し注文・及び席のみの注文については「注文なし」と同義とした。
4・「みろく庵のうな重 肝吸」のように、明らかに別の店舗と思われるものは、当該店(この場合はふじもと)の注文として集計した。
5・関西の注文については店名が記載されてない事が多いが、メニュー名で推定できるものについては、当該店の注文として集計した。
例
・みそ煮込みうどん
やまがそばのみのメニューのため、やまがそばに算入
・鍋焼きうどん
やまがそば、小雀弥両方のメニューにあるため、店名不明として計算
・きつねそば・たぬきそば
きつねそばはやまがそば、たぬきそばは小雀弥のメニューにのため、それぞれの店に算入
・きつねうどん
やまがそば、小雀弥両方のメニューにあるため、店名不明として計算
まずはみろく庵全体の勝敗と、メニュー別の勝敗を紹介する。
2018年 |
勝 |
敗 |
勝率 |
2017年 |
勝 |
敗 |
勝率 |
みろく庵合計 |
209 |
197 |
.515 |
|
206 |
183 |
.530 |
うどん |
58 |
57 |
.504 |
|
70 |
60 |
.538 |
そば |
46 |
50 |
.479 |
|
58 |
45 |
.563 |
雑炊 |
42 |
25 |
.627 |
|
21 |
10 |
.677 |
定食(肉) |
46 |
44 |
.511 |
|
54 |
47 |
.535 |
定食(野菜・豆腐・玉子など) |
18 |
16 |
.529 |
|
15 |
10 |
.600 |
定食(魚) |
14 |
14 |
.500 |
|
17 |
18 |
.486 |
親子丼 |
11 |
15 |
.423 |
|
9 |
14 |
.391 |
カツ丼 |
10 |
12 |
.455 |
|
2 |
3 |
.400 |
その他丼 |
10 |
15 |
.400 |
|
6 |
10 |
.375 |
冷やし中華 |
1 |
3 |
.250 |
|
3 |
3 |
.500 |
昨年21勝10敗0.671と好成績だった雑炊が、今年も貯金17を稼いで稼ぎ頭となった。
他のメニューの勝率がほぼ5割の中、今年のみろく庵の貯金は雑炊で得た結果となっている。
麺類の勝率が全体的に下がったが、それ以外のメニューは前年と似たような成績になったようだ。
個別メニューにおいて、2018年度20食以上食べられたものは以下の6品。
2018年度 |
注文数 |
勝 |
敗 |
勝率 |
2017年度注文数 |
勝 |
敗 |
勝率 |
肉豆腐定食 |
41回 |
24 |
17 |
.585 |
43回 |
23 |
20 |
.535 |
梅雑炊 |
33回 |
23 |
10 |
.697 |
17回 |
13 |
4 |
.765 |
味噌煮込みうどん |
33回 |
19 |
14 |
576 |
44回 |
28 |
16 |
.636 |
鍋焼きうどん |
30回 |
11 |
12 |
.478 |
20回 |
8 |
10 |
.444 |
里芋煮定食 |
24回 |
12 |
12 |
.500 |
15回 |
9 |
6 |
.600 |
肉生姜焼き定食 |
20回 |
7 |
13 |
.350 |
20回 |
12 |
8 |
.600 |
今年は肉豆腐定食が注文トップで、安定した成績を残した。
千田六段と三枚堂六段が3勝0敗で、二人が貯金を作っている。
梅雑炊は今年も驚異的な勝率。
昨年5勝0敗だったMr.梅雑炊こと千田六段が今年も7勝1敗。
他佐藤和俊六段も5勝1敗で、二人で稼いだ形。
ただし残り12人でも貯金3であり、前述した通り雑炊系全体の勝率が高く、それが過去の2回の集計にも共通する事から、消化の良い雑炊系メニューは好手と言えるのではないか。
雑炊は2019年度から注文できなくなる。
紫金飯店にお粥はあるが、量が多い事もあり雑炊愛好者の需要を満たすものではない気がする。
今まで雑炊で戦ってきた棋士は、何処にいくのだろうか。
味噌煮込みうどんも3回続けて高勝率を維持。今年は15人が注文した。
昨年の北浜八段のように大きく稼いだ棋士がいなかった分勝率は少し下がったが、逆に言うと特定の棋士に左右されず安定して稼いだとも言える。
肉豆腐定食や雑炊はもちろん、味噌煮込みうどんも関東ではみろく庵のみのメニューである。
閉店前に初めて食べたのだが、思ったよりさっぱりしていて野菜中心の胃に優しい食事だった。
けんちんうどんとも少し違うし、違う注文をしなくてはいけないのは辛い所。
鍋焼きうどん、里芋煮定食はほぼ5割であるが、肉生姜焼き定食は大きく勝率が下がった。
2018年度はふじもとの生姜焼き定食も6勝16敗.273と成績が悪く、生姜焼き定食受難の年であった。
追加注文の勝敗は以下の通り。
2018年度 |
注文数 |
勝 |
敗 |
勝率 |
2017年度注文数 |
勝 |
敗 |
勝率 |
餅 |
28回 |
12 |
16 |
.429 |
27回 |
20 |
7 |
.741 |
おにぎり |
12回 |
8 |
4 |
.667 |
15回 |
6 |
9 |
.400 |
唐揚げ |
3回 |
1 |
2 |
333 |
4回 |
2 |
2 |
.500 |
卵 |
3回 |
1 |
2 |
.333 |
3回 |
1 |
2 |
.333 |
餅は勝率が大きくダウン。
ただし、郷田流餅追加ブームが起きた2014年度以降の3年間は32勝33敗であり、昨年度の勝率が高くでただけだったのかもしれない。
なお、力うどん(そば)も4勝8敗.333と、昨年の8勝8敗.500と比べると大きく負けてしまった。
逆におにぎりは好成績。
おにぎり単体でも昨年0勝2敗だったのが4勝2敗.667と巻き返していて、餅とおにぎりで明暗が分かれた。
他、名物メニューをいくつか取り上げる
・若鶏唐揚げ定食
2017年度2勝3敗.400から5勝5敗.500と、注文数がアップ。
2018年度はチューリップでなくなったのがニュースになったが、その時点では閉店する事になるとは思っていなかった……。
・豚キムチうどん
藤井聡太四段の注文で昨年は躍進したが、2018年度は6回注文で2勝4敗.333と注文数、勝利数ともに減少。
例年8食前後で推移しているので、昨年が一時のブームだったようだ。
・ギンダラ定食
昨年7勝11敗.389が1勝2敗.333と注文数が激減。
昨年7食3勝4敗.428の岡崎六段が降級したのを抜いても、注文数が激減したのは何故だったのだろうか。
ギンダラは看板メニューだと思っていたので、もう二度と食べられないのは悲しい。
・つけとろろそば
2017年度8勝2敗.800の高勝率メニューは、2018年度も5勝3敗.625とまずまずの数字。
ほそ島やのとろろせいろそばを頼めば生卵が付くのに、あえてつけとろろそばに生卵を追加注文する髙崎六段は生粋のみろく庵党。
2013年度以降は関東の対局でみろく庵以外の注文が確認できない棋士である。
みろく庵閉店のニュースが流れたときにまず心配したのが、髙崎六段の食事が一体どうなるのかだった(大きなお世話である)。
髙崎六段ははたして何処から出前を取るのか、個人的に注目している。
・じょい豆腐定食
2018年の髙見新手は、4勝2敗.667とまずまずの数字。
叡王戦の挑戦者が永瀬七段に決まってから、みろく庵ではじょい豆腐定食とミックス雑炊(納豆入り)を頼む叡王戦対決が見られたという話だが、もう指すことはできなくなってしまった。
みろく庵の食事注文で特筆すべき所は、棋士の細かい注文に対応していた事である。
おにぎり1個、冷やしトマト1つから出前を受け付け、肉豆腐定食のみそ汁抜き(渡辺流)や唐揚げのマヨネーズ追加(橋本流)といった注文は、後に言われなくても対応するようになった。
餅や肉豆腐定食の肉多目というメニュー表にないものも気軽に頼むことができた。じょい豆腐定食はその最もたるものだ。
店に食べに行っても対応がフレンドリーで、一度行ってみろく庵が好きになった将棋ファンも多かったと思う。
私自身、初めてみろく庵でメニュー外注文(肉豆腐定食に生卵追加)した時は緊張したが、普通に接客してくれて随分と嬉しかったのを今でも覚えている。
最後にと思い切って注文した玉子雑炊の玉子抜きも、快く作って下さった。
棋士の注文が2年連続で出前店中一番多く、かつ勝率も2年続けて5割を越えたのは、棋士が気を使うことなくいつものように食事を取れるといった面があったのではないか。
みろく庵が代わりに出前を担当していた龍樹など、これまでにも閉店した出前店は数多くあったが、ここまで閉店が惜しまれた店はなかった。
長年の将棋界への貢献に感謝して、この項を〆たいと思う。
ありがとうございました。