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将棋棋士の食事とおやつ出張所

2017年度順位戦食事別勝敗統計(出前店編)

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2017年度順位戦食事別勝敗統計(出前店編)

2017年度の順位戦は、対局中の外出が禁止されて以降、通年外出禁止になった初めての順位戦であった。
ほとんどの棋士(延べ92%)が対局中に出前を取る事になったので、ここで一度出前情報をまとめてみようと考えた。
つまり、2017年度順位戦食事別勝敗統計である。
これは、将棋ペンクラブログが2009年度順位戦食事別勝敗統計から完全にアイディアを頂いている。
当時の記事も合わせて読んでいただき、当時との違いも含めて味わって頂けると幸いである。

2009年度順位戦食事別勝敗統計(概要)
2009年度順位戦食事別勝敗統計(食事分類編)
2009年度順位戦食事別勝敗統計(個別メニュー編)

なお、集計にあたっては以下のルールを設けた
1・順位戦はプレーオフを除き全670局。そのうち、不戦局・休憩前終局・静岡対局を除いた2458食分を集計した。
2・休憩前に終局した対局で終局前に出前注文がされた場合、対局中に食事を取っていない分についてはカウントしなかった。
3・今回は出前注文を対象にしたので、各種の買い出し注文・及び席のみの注文については「注文なし」と同義とした。
4・関西の注文については店名が記載されてない事が多いが、メニュー名で推定できるものについては、当該店の注文として集計した。

・みそ煮込みうどん
やまがそばのみのメニューのため、やまがそばに算入
・鍋焼きうどん
やまがそば、小雀弥両方のメニューにあるため、店名不明として計算
・きつねそば・たぬきそば
きつねそばはやまがそば、たぬきそばは小雀弥のメニューにのため、それぞれの店に算入
・きつねうどん
やまがそば、小雀弥両方のメニューにあるため、店名不明として計算



末席幹事氏より順位戦での店別勝率を知りたいとの要望があったので、今回は店別勝率を紹介する。
(将棋ペンクラブログの2009年度と同じく3回予定)

今記事分の注意事項を2点。
・昼と夜で別々の注文をした場合、それぞれの店の勝敗に加算した。
・関西の勝率は店名不明分があるため、イレブンと内山田以外の関西の店については、勝率は正確なものではない。


店名 勝率
みろく庵 206 183 .530
ほそ島や 148 158 .484
紫金飯店 103 135 .433
ふじもと 80 74 .519
千寿司 57 56 .504
東・注文なし 67 67 .500
やまがそば 127 110 .536
小雀弥 50 54 .481
イレブン 51 41 .554
珉珉 40 34 .541
内山田 33 23 .589
ふな定 2 8 .200
サーレ&ペペ 2 7 .222
たまいち 1 0 1.00
琳蘭 0 1 .000
関西店名不明 48 48 .500
西・注文なし 43 58 .426


それでは各店舗をざっと確認してみよう。
・みろく庵
関東では注文数・勝率とも実質一人勝ち。
うどんそばから定食、雑炊まで幅広いメニューで愛されている。
みそ煮込みうどんが29勝16敗.654と安定的に稼ぎ、つけとろろそば8勝2敗.800、梅雑炊13勝4敗.765などで隙なく貯金を作った分で高勝率。
C級1組9回戦で髙崎一生六段が「つけとろろそば・生卵」を注文し、ほそ島やのとろろせいろそば(デフォルトで卵付き)と値段も同じなのに何が違うのか、と当時思ったのだが、つけとろろそばの勝率を意識していたのだろうか。
みろく庵のみで注文を固めた場合も50勝43敗.538と、高勝率をキープしている。

・ほそ島や
若干勝率がマイナス。看板メニューのカレーライスで20勝26敗.435と負けが込んだのが響いた形。
みろく庵と同様のメニューで負けが多い(鍋焼きうどん2勝9敗.182・とろろせいろそば9勝12敗.429)のが意外な所。
ほそ島やのみで注文を固めた場合は20勝32敗.385と、こちらも苦戦。

・紫金飯店
2017年度は苦戦。
丼メニュー全体で13勝24敗.351と負けが込み、五目炒飯10勝5敗.667以外に貯金を5以上稼ぐ高勝率メニューがなく、少しづつ負けが膨らんだ形となった。
紫金飯店の看板メニュー月替り定食は
勝率
A定食 12 8 .600
B定食 9 14 .391
C定食 8 17 .320
と、A定食以外は苦戦。何か傾向があるのだろうか。
紫金飯店のみで注文を固めた場合は8勝7敗.533と、こちらはサンプルが少ないが悪くはない。

・ふじもと
2017年度大きく躍進したチキンカツ丼が16勝10敗.615と稼ぎ、チキンカツ定食が12勝8敗.600と続き、チキンカツで稼いだ一年であった。
うな重が17勝27敗.386と苦戦した分はチキンカツが埋めた形。
ふじもとのみで注文を固めた場合は1勝1敗.500だが、あくまで参考。

・千寿司
上にぎり寿司が26勝9敗.743と荒稼ぎ。某棋士を除いても17勝8敗.680と高勝率メニュー。
反面、並にぎり寿司4勝10敗.286・中にぎり寿司13勝14敗.481・特上にぎり寿司0勝2敗.000と他のメニューが伸びず全体で5割に。
千寿司のみで注文を固めたのは某棋士一人のため、省略。

・東・注文なし
勝率
昼のみ注文なし 16 18 .471
夕のみ注文なし 12 15 .444
一日注文なし 37 34 .521

注文なしについては、東西合わせてまとめる事とする。



・やまがそば
にゅうめんが9勝0敗と無敗(5食以上食されているメニューでは唯一の無敗)
他に、カレー定食(うどん)が11勝2敗.846と高勝率。親子丼セットも17勝9敗.654と、セットメニューの勝率の高さが目立つ。
東西とも一番食されている店が一番勝ち越し数が多い、という結果になったのが面白い所。
勝率が高いから注文されているわけではないと思うので、食べ慣れている安心感が棋士の精神面を支えているのだろうか。
なお、やまがそばのみで注文を固めた場合は23勝31敗.426とやや不振。

・小雀弥
人気メニューは親子丼8勝7敗.533・ぶっかけうどん定食6勝4敗.600。
これが現すように、大きく稼いだメニューも負けが込んだメニューもなく、安定している。
突き抜けるには何か看板メニューが欲しい所。
小雀弥のみで注文を固めた場合は9勝7敗.563と、こちらも可も不可もない数字。

・イレブン
こちらはメニューが他とは違うため、勝敗は全て集計されている。
サービスランチの一口ヘレカツが9勝2敗.818と高勝率。
夜のメニューは、個別メニューではサンプルが少ないものの、全体で20勝11敗.645とこちらも高勝率で、一部棋士の人気に応える形になっている。
イレブンのみで注文を固めた場合は2勝1敗.667。


・珉珉
個別メニューはサンプル数が少ないが、ラーメン系が全体で7勝3敗.700、定食系が全体で14勝9敗.609と細かく稼いでいる。
大きく負けが込んでいるメニューはなく、その結果が総合で勝率5割越えに繋がったか。
珉珉のみで注文を固めた場合は4勝5敗.444と、一つ負け越し。

・内山田
こちらも勝敗は全て集計されている。
和牛ステーキ定食15勝7敗.682・和牛100%ハンバーグ弁当15勝11敗.577と、当初からあるメニューが安定した支持と勝率を維持。
安定感のある店で、今後も期待してみたい。
なお、内山田のみで注文を固めた場合は3勝2敗.600

・ふな定・サーレ&ペペ・たまいち・琳蘭
データが少ないのでこの辺りはまとめて。
注文が少ないのは勝率が低いためではないと思うのだが、ここまで勝率が低いのは少し気になる。
一番注文が多い店が一番勝ち越し数が多いことと合わせて考えると、普段と同じ行動をとる事が平常心を保ち、将棋の対局にも影響を与えるとの仮説を立ててみたいが、それを証明するためには何年か経過をみる必要があり、2017年度だけではなんとも言えない。

・関西店名不明
勝率
親子丼 12 9 .571
他人丼 0 3 .000
カツ丼 4 3 .571
天とじ丼 0 3 .000
木の葉丼 1 0 1.00
天丼 1 0 1.00
おにぎり 1 0 1.00
ざるそば 0 1 0.00
おろしそば 1 2 .333
きざみうどん 1 1 .500
きつねうどん 1 7 .125
山かけそば 1 1 .500
わかめうどん 1 1 .500
わかめそば 1 0 1.00
玉子とじうどん 0 2 .000
玉子とじそば 1 0 1.00
カレーうどん 3 1 .750
鍋焼きうどん 6 8 .429
天ぷらうどん 0 1 .000
そば定食 4 1 .800
うどん定食 3 3 .500
酢豚定食 1 0 .000
うなぎ丼 4 1 .800
のり弁当 1 0 1.00

これら のメニューは店名不明のため各店舗に算入されず。
そのため、やまがそばと小雀弥については勝率が大きく変わる可能性がある。


・西・注文なし

勝率
昼のみ注文なし 11 14 .440
夕のみ注文なし 13 20 .394
一日注文なし 17 24 .415

東西ともに、注文なしの勝率は全体からすると低い傾向にある。
特に夕食の注文なしの勝率が一番低い。
昼食や一日通しての注文なしと違い、夕食の注文なしの場合、負けを覚悟してもう食事を注文しない場合もあるという事なのだろうか。



店別の統計については以上。
次記事では、将棋ペンクラブログと同じく食事分類別でまとめてみたい。
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コメント

1. メニューの値段

きちんと調べられていて、読んでいて面白い記事でした。
読んでいて疑問が一つ浮かびました。
それは各メニューの値段です。
午前中の状況が優勢なため機嫌が良い、もしくは、午後から巻き返そうと意気込む際には、もしかしたら少し奮発して高いものを頼むかも?と思ったので気になりました。
もしわかるようなら、教えて頂けると嬉しいです。

2. 統計将歓喜

統計将のハートを射貫く記事を楽しく読ませていただきました。
名無しさんによる、メニューの値段という視点もおもしろそうです。

あくまでおもしろ考察であることは理解した上で、統計将として「食事内容が勝敗に及ぼす影響」という視点で悪乗りしてみます。
高勝率の棋士が好むメニュー・店舗が上位に来やすくなる影響を避けるため、対局時のレーティングを参考にして「その対局で変動したレーティングポイント」をメニュー・店舗ごとに累計してみるのはいかがでしょうか。

実際にやるのはめちゃくちゃ大変だとは思いますが(笑)。

3. >>通りすがりの名無しさん

ほとんどの棋士は注文の傾向が決まっていて、形勢によって変えるという事はないようです。
例えば第76期のA級でいうと、
・広瀬八段は昼はご飯もので済ませて夜は鰻か寿司
・深浦九段は昼は麺類、夜は寿司等のご飯物を少しだけ
と棋士によって変わりますが、同じスタイルを一年通しています。

具体的な食事注文は、お手数ですが下記URLでご確認下さい。
http://ryokan.kage-tora.com/main1.html#JUNI

ごく一部の棋士を除いて、対局中は食が進まず、食事注文もあまり考えていないようです。
ただし、昨期の順位戦では、片上六段が公開しなければ公にならなかった以下のような例もあります。
http://shogi-daichan.com/2017/12/16/%e6%b0%b8%e4%b8%96%e4%b8%83%e5%86%a0%e4%bc%9a%e8%a6%8b%e3%81%ae%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%a8%e3%81%8b/

ちなみに、この対局は宮田六段が勝っております。
宮田六段は、なぜ玉子雑炊からカツ丼に変えたのでしょうか。
棋譜を眺めながら考えてみられるのも面白いかもしれません。

4. >>匿名さん

>>「その対局で変動したレーティングポイント」をメニュー・店舗ごとに累計してみる
というのは案そのものとしては悪くないと思うのですが、如何せんサンプル数が少なすぎます。

第76期順位戦で棋士が注文したメニューの数は、大盛や、餅などの追加注文は別計算すると575品目になります。
総注文数で割ると一メニュー辺り平均4注文になりますから、レーティングを仮に集計しても、正確な数字は出ません。
それと、梅雑炊(千田六段・佐々木勇気六段)のように、一部の棋士が稼いだメニューについては、メニューが良かったのか棋士がの能力によるものなのかが一年では判別不能です。

ただし、みそ煮込みうどんのような、第68期でみろく庵23注文やまがそば15注文・第76期でみろく庵45注文やまがそば20注文と、サンプル数の多く注文している棋士も多いメニューに関しては、ある程度信頼できる数字にはなりそうです。

それにしても、レーティングの特性上、長いスパンで集計を取る必要があります。
仮に取り掛かるとしても、優先度はかなり後ろになります。
ご了承下さい。

5. 無題

悪乗りのコメントに真正面からお答えいただき、恐縮です。これは本物ですね(笑)。

サンプルのご懸念はその通りだと思いますが、趣旨の比重は「レーティング」にありますので、本記事のように店舗単位にまとめてもよいですし、次回予定記事のように食事分類別にまとめてもよいと思います。

スパンについては、レーティングのスパンが問題になるのは人間視点で1500の初期値からの収束に要する期間や実力変動への追随性であって、メニューや店舗が持つ対局寄与パワー(笑)が固有値だとすれば、そこまで問題にならない気がします。

と、書いてから気付きましたが、ひょっとすると誤解があるのかも。
「みそ煮込みうどんのレーティングは1640」などとするのではなく、「みそ煮込みうどんの今期レーティング寄与は累計でプラス42」というイメージです。数値を注文数で割ってもいいかもしれません。理論上は、食事内容がまったく無関係だとすれば、どのメニューの寄与も、仮に強い棋士に好まれていたとしても、プラマイゼロに収束するはずです(笑)。

6. メニューの値段

きちんと調べられていて、読んでいて面白い記事でした。
読んでいて疑問が一つ浮かびました。
それは各メニューの値段です。
午前中の状況が優勢なため機嫌が良い、もしくは、午後から巻き返そうと意気込む際には、もしかしたら少し奮発して高いものを頼むかも?と思ったので気になりました。
もしわかるようなら、教えて頂けると嬉しいです。

7. >>匿名さん

レーティングは相対的な指標なので、
>>「みそ煮込みうどんの今期レーティング寄与は累計でプラス42」
という±○○の数字の部分で語るのはあまり意味がないと思いますし、それだと勝敗の勝ち越し(負け越し)数でも代用できるのではないでしょうか。
例えばほそ島やの「もりそば」と「餅入りの山かけそば」は、第76期順位戦においては同じ5勝2敗なのですが、レーティングの変動が3~11と差のある棋士と対局をしつつ、もりそば(+23)餅入りの山かけそば(+24)とほぼ同じ増加具合です。
他にもいくつか簡単にチェックした所、大体1勝辺り+8前後で推移していました。
ちょっとびっくりしましたが、これでは勝敗だけチェックすればいいという事になってしまいます。
(レーティングは、http://kishibetsu.com/から参考にしました)

長いスパンを取る必要があるのは、棋士は大体注文メニューが固定されているため、注文したメニューの勝敗が棋士本人の調子の影響を受け、短期間では正確なものがでないと考えるためです。


上の返信でも挙げましたが、下記URLにて年度別の順位戦対局はまとまっております(2006年度以降は全対局が記録されています)ので、もし興味がおありであれば、御自身で調べられても良いと思います。
http://ryokan.kage-tora.com/main1.html#JUNI

8. >>通りすがりの名無しさん

純粋に、各メニューの値段を知りたいという事なのでしょうか。

下記URLより各店舗のリンクを踏んでいただければ、判明している分のメニューの値段は分かります。
よろしければご確認下さい。
http://ryokan.kage-tora.com/restaurant.html

9. 無題

だんだん悪ノリの深淵に足を踏み入れつつある気がします(笑)。

イロレーティングの定義からして、平均すると1勝当たり8ポイントになるのは必然ですね。逆に、平均しても1勝当たり4ポイントにしかならないようなメニューがもしあるとすれば、たとえそのメニューとしての勝率が高くても、強い棋士に好まれているだけ、と言うことができます。そしてそんな偏ったメニューがないとすれば、「強い棋士に好まれているだけ」のメニューが、本記事のランキングを不当(?)に押し上げていたりはしない、と言うことができると思います。

レーティングを利用するのは、あくまで、高レートの棋士が挙げた(味噌煮込みうどんじゃなくても易々と挙げられたであろう)一勝と、低レートの棋士が挙げた(困難な勝負に勝てた理由は、味噌煮込みうどんのおかげかもしれない)一勝に、差を付けるための措置です。強いはずの豊島八段があるメニューで5勝5敗だとしたら、それはあまり良くないメニューなのでしょう(笑)。

真摯にやればやるほど、夢も希望もない理論的平均に落ち着いてしまう気がします(笑)。

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将棋棋士の食事とおやつに関する話だったが、将棋考古学沼ネタもこちらで。

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